機械設計をフルリモートで外注することはできる?現役の機械設計者が解説します

コラム

🧑‍💼「設計案件が増えてきたが、人員を増やしたくてもなかなか集まらない」
👨‍💻「リモートワークも含めた設計者の増員を検討しているが、そもそもフルリモートで設計業務は可能なのか?」

こんなお悩みの採用担当者や社長の方はいらっしゃいませんか?

今回は、「機械設計をフルリモートで外注は可能か」ということについて、現役の機械設計者が解説していきます。

結論、機械設計の仕事はフルリモートでも依頼・対応が可能です

ただし、業務の外注範囲や対面の打ち合わせ頻度など、発注側と受注側の間ですり合わせてから依頼を決めるのが良いでしょう。

本記事では、
✅フルリモートで機械設計者ができること/できないこと
✅実際にフルリモートで業務を行っている事例
✅発注にあたっての注意点
これらについて解説します。

👤自社に設計者がおらず、地域で募集してもなかなか人が集まらない
👤機械設計の外注をフルリモートで依頼するポイントが分からない
こんな企業の採用担当者・社長さんに参考にしていただきたい記事です。

機械設計はなぜフルリモート可能なのか

写真:photoAC

機械設計は、設計・製図、設計計算書などの関連書類作成が設計の多くを占めています。そのような仕事はパソコンとCADがあれば、フルリモートでの業務が可能です。

機械設計の仕事内容を棚卸しすると、次のような仕事が完全在宅(フルリモート)で行えます。

  • 機械の構想を考えて、ポンチ絵などを描き、アイデアを資料にまとめる
  • 設計計算(強度計算や公差計算など)を行う
  • CADで設計する(構想設計、詳細設計)
  • 購入品の選定をする
  • 計画図・組図から2次元図面を作成する(いわゆる「バラシ」の工程)
  • 部品表を作成する
  • 見積もり依頼・原価計算をする
  • Web会議で、進捗状況や今後のアクションについて打ち合わせする

私自身も、現在フルリモートで機械設計の業務委託案件を受けています。

✅設計、製図はすべて自宅でフルリモート
✅打ち合わせはWeb会議が基本
✅時々(数か月に1回程度)クライアント企業様で打ち合わせ・現物確認

このような形で、基本的には自宅で業務を行っています。
機械設計は出社が前提と思われがちですが、実はリモートで対応できる業務も多くあります。

とはいえ、機械設計の仕事は多岐にわたります。実際に設計したもの(実物)を評価する業務になると、ものがある現場に行く必要が出てきます。

次は、フルリモートでできない仕事について解説します。

フルリモートでできない機械設計の仕事

写真:O-DAN

機械設計はもの(実物)を扱う仕事なので、ものがある場所でないとできない仕事があります。

  • 機械の製造や組立に立会う
  • 現物を直接見て、仕上がり具合や不具合を確認する
  • 評価試験を行う

これらの仕事は、製造現場や実験室などに出向き、現場で作業する必要があります。
ですが、これらは次のような進め方で対処できます。

  • 製造や組立への立ち合いは、依頼側の企業が行う。
  • 現物確認や不具合対応は、出張で対応する。1回の出張で解決が難しい場合は、依頼側の企業と現地作業を分担する。

機械の複雑さや不具合の内容にもよりますが、1回の出張で問題点と対策が見えてくるでしょう。
設計者は改善品の図面を作成、企業側は暫定対策を行う、という分担を決めることで、次に起こすべきアクションも明確になります。

実際にフルリモートで業務をする事例

実際にフルリモートで機械設計の仕事をしている事例を紹介します。

設計会社

設計会社は自社で機械設計者を抱え、クライアントの機械や設備を設計します。

  • 機械の仕様書から、3Dモデルと図面を作成する
  • すでにクライアントが作った3Dモデルから、2次元図面を作成する

このような仕事では、成果物が3Dモデルや図面になりますので、フルリモートで外注することは可能です。
依頼内容を詳細に説明するため、対面の打ち合わせを実施する場合もあるでしょう。ですが、多くの場合は1度打ち合わせした後、Web会議での打ち合わせに移行できるでしょう。

機械設計の業務委託

機械設計者は、フリーランスとして独立している方もいれば、企業に勤めながらも個人事業として設計業務を受けている方もいます。

彼らは伝手(つて)やインターネットなどを活用し、機械設計を依頼したい企業の設計案件を行っています。

普段の設計業務や定例ミーティングなどは自宅や事務所で行うため、依頼先とは(ほぼ)フルリモートで仕事をしています。対面の打ち合わせや現物確認の必要性が出てきたときは、出張して対応します。

クラウドソーシングサイト

クラウドワークスココナラのようなクラウドソーシングサイトで設計案件を発注することもできます。

これらのサイト上で、機械設計者として登録している方は複数人います。企業側としては、サイト上で仕事を応募したり、サイト内のプロフィールで気になる設計者にDM(ダイレクトメール)を送ったりして、仕事を発注します。

既存の設計案件では、3Dモデルや図面の作成案件が多いです。これらはフルリモートで発注できる案件となります。

CADオペレーター

CADオペレーターはCADを操作して、3Dモデルや図面を作成する仕事です。パソコンとCADがあれば、仕事は完結しますので、CADオペレーターへの仕事発注もフルリモートで可能です。

ここまで見てきたように、機械設計を外注する方法はいくつかあります。こちらの記事で「機械設計を外注する方法4選」について解説しましたので、あわせてご参考ください。

機械設計のフルリモートが難しいケース:メーカーでの正社員勤務

メーカー勤務の正社員は、多くのメンバーが出社しています。私の勤務先では、新型コロナウイルスが5類に移行した2023年5月ごろから、出社率が増えたように思います。

機械設計者は、自社工場や試作の現場での立会いも仕事の一つになるでしょう。製造現場から電話がかかってくることもあります。試作した機械を評価するため、試験装置のある場所に出社する必要も出てきます。

こうした業務を行うため、メーカー勤務の正社員がフルリモートで働くのは難しいのが実情です。

ただこういった会社でも、設計業務やWeb会議上の打ち合わせでリモートワークで完結できる日もあります。そのため、出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッド型で働いている方もいます。

機械設計をフルリモートで外注する際のポイント

写真:photoAC

フルリモートで機械設計の業務委託を成功させるには、発注者と受注者のあいだで「どんな仕事を、どんな形で進めるか」を事前にすり合わせることが大切です。

ここでは、実際に業務委託で設計案件を受けている立場から、外注化にあたって事前に確認しておくべき5つのポイントをご紹介します。

①業務範囲のすり合わせ
②業務形態
③報酬形態
④稼働時間とスケジュール
⑤使用CAD

一つずつ見ていきましょう。

①業務範囲のすり合わせ

まず重要なのは、外注したい業務の範囲を明確にすることです。

「構想設計からお願いしたいのか」「部品図のバラシだけお願いしたいのか」「強度計算も含めて設計全体を任せたいのか」といったように、どこまでの範囲を依頼するかを発注者側が整理したうえで、受注者側とすり合わせを行いましょう。

受注側としても、自分が対応できる範囲を明確にし、発注者側に伝えることで、両者のミスマッチを防ぐことができます。

②業務形態

契約形態は大きく分けて「請負契約」と「準委任契約」があります。

  • 請負契約:成果物(図面や3Dモデルなど)を納品して完了とする形式で、作業工程・納品物が明確な業務に向いています。
  • 準委任契約:成果ではなく「作業そのもの」に対して報酬が発生する形式で、新規設計や仕様変更が頻繁に発生する業務に適しています。

新しい機械を設計する案件、仕様から決めていく案件では、準委任契約でスタートするのがおすすめです。

③報酬形態

報酬形態もあらかじめ話し合っておきたいポイントです。代表的なのは次の2つです。

  • 時給(準委任契約に多い)
  • 成果物ごとの一括請求(請負契約に多い)

新しい装置や初めての依頼であれば、「時給制」で始めることをおすすめします。
なぜなら、一括見積もりでは工数の見積もりが難しく、受注者側も赤字リスクを避けるため高めの金額を提示しがちだからです。

実績のある機械や、設計作業量が明確な場合は、一括請求でも問題ないでしょう。

④稼働時間とスケジュール

業務をスムーズに進めるには、稼働可能な時間やスケジュールの目安を共有しておくことが重要です。

例えば、
「月に40時間まで対応可能です」
「10月末までに詳細設計を完了したいです」
といった形で、お互いのスケジュール感を事前に確認しておくことで、後々のすれ違いを防げます。

時給制では、月の上限時間と、超過時の連絡ルールをあらかじめ定めておくと安心です。この取り決めによって、企業側の予算オーバーを防ぐことができます。

⑤使用CAD

機械設計では、会社によって「SolidWorks」「iCAD」「Inventor」など、使用しているCADソフトが異なります。
受注者が対応できるCADで問題ないのか、それとも発注者側のCADでデータをやり取りする必要があるのかを確認しましょう。

CADのフォーマットは各社独自のため、元データ(CADのネイティブ形式)での共有を希望したい企業も多いです。その場合は、企業側が持っているCADライセンスの貸与も検討してみてはいかがでしょうか。

(まとめ):業務内容を分担・切り出して、機械設計をフルリモートで外注しよう!

この記事では、「機械設計をフルリモートで外注できるのか?」というテーマについて、フルリモートでできる仕事/できない仕事、フルリモートの事例、発注時のポイントまで解説しました。

機械設計の仕事は、構想設計・詳細設計・製図・見積りなど、多くの工程がPC作業で完結するため、切り出し方を工夫すればフルリモートでの外注が十分に可能です。
もちろん、現物確認や評価が必要な工程は出社・出張が必要な場面もありますが、そこも含めて上手に役割を分担すれば、リモート外注の活用範囲は大きく広がります。

私キウイも機械設計業務の業務委託を承っております。
普段は大手製造業メーカーで技術者として働き、産業機械やモータを使った機械などの設計を担当してきました。
業務委託のご案件として、製缶物や動力伝達機械、精密機器の設計を担当した実績があります。

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