機械設計の請負とは?できること・流れ・業務委託との違いまで現役設計者が解説!

コラム

「新しく製品を開発したいが、社内に設計者がいない…」
「試作まで進めたいけど、そもそも図面が描ける人がいない…」

そんな悩みをお持ちの中小企業の社長さんも多いのではないでしょうか。

ものづくり・製品開発で必須と言えるのが「機械設計」の仕事です。
ものが動く仕組みや、工場で作れるような形状を考え、図面に落とし込んでいく工程を担当します。
しかし、専任の設計者を雇うのはハードルが高く、社内で対応できずにプロジェクトが止まってしまう…そんなケースも少なくありません。

こうした課題を解決する手段のひとつが「機械設計の請負」です。
外部の設計者に、仕様にもとづいた設計業務を一括で任せることで、社内リソースの不足をカバーしながら開発を前に進めることができます。

この記事では、「そもそも機械設計の請負とは何か?」という基本から、請負の流れを解説します。
また、混同しがちな請負契約と業務委託契約の違いについても説明します。

「初めて機械設計の請負を検討する」という方でも、この記事を読めば、安心して機械設計の請負を進められるようになります。
ぜひ最後までご覧ください。

機械設計の請負とは?

「請負(うけおい)」とは、発注者(お客様)からの依頼に対して、成果物を納品することを目的とした契約形態です。
ソフトウェア開発や建設業などでも広く使われている言葉ですが、機械設計の分野でも同様に「ある製品や設備の図面を完成させて納品する」ことをゴールとした外注方法を指します。

たとえば、以下のような依頼が代表的です:

  • ○○装置の構想設計から組立図・部品図の作成まで一式をお願いしたい
  • 3Dモデルから、出図用の2次元図面を作ってほしい
  • 過去図面の改造や流用設計を、仕様に応じて対応してほしい

このように、請負では「仕様・納期・成果物」があらかじめ明確に定められ、基本的には“どのように設計を進めるか”という手段は外注先に任せるスタイルになります。
成果物に対して報酬が支払われるため、納品物が満たすべき要件や品質レベルについても、事前にしっかりすり合わせることが重要です。

新製品の構想や設備の改善アイデアがあっても、それを図面として形にできなければ前に進みません。
請負という形で外部の設計者に依頼することで、社内の負担を抑えながらも、確実に設計を進めることができます。

機械設計の請負でできること

「請負で頼めることって、どこまでが対象なんだろう?」
初めて依頼を検討する際に、こうした疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。

実際のところ、機械設計の請負では、構想設計から製造図面の作成まで、幅広い工程をカバーできます。
ここでは、請負で依頼できる主な業務内容をご紹介します。

構想設計

お客様の「こういう装置を作りたい」「この動きを実現したい」といった要望をもとに、構造や方式をゼロから考える工程です。
アイデア段階のラフスケッチからでも請負できる会社もあり、新製品開発の初期フェーズでも活用されています。

機構設計・レイアウト設計

モーター、シリンダー、カム機構などを組み合わせて、意図した動きが実現できるように構成する工程です。
使用環境やメンテナンス性を考慮しながら、部品配置や筐体サイズを検討します。

詳細設計・部品図作成

構想やレイアウトが固まった後は、個々の部品を製作できるよう、正確な寸法・公差・材質を記載した図面を作成します。
ボルト1本まで描かれた「製作用の図面(部品図)」は、製造現場との橋渡しとなる重要な成果物です。

3Dモデリング

3D CADソフトを用いて3Dモデルを作成し、装置全体の組み立て状態を確認できるようにすることも可能です。
干渉チェックやアニメーションによる動作検証、部品表(BOM)作成などにも対応できます。

既存図面からの流用設計

すでにある図面をもとに、寸法変更や一部仕様変更を行う「流用設計」も、請負で依頼できる代表的な業務です。
流用設計は設計変更の内容が明確であれば比較的取り組みやすい分野です。図面も過去の図面を流用することが多く、ゼロから3Dモデル・図面をつくる必要が無い分、納期も短くできる傾向にあります。

このように、請負による機械設計は「構想から図面完成までの一貫対応」だけでなく、「部分的な図面作成」や「既存図面ベースの流用設計」など、さまざまなフェーズで利用することができます。

「社内で手が回らないところだけ頼みたい」というご要望にも柔軟に対応できるのが、請負の強みといえるでしょう。

機械設計の請負の流れ

以下の図は、機械設計の請負における一般的な流れを示したものです。

機械設計の請負の流れ

各ステップごとに、ポイントを解説していきます。

請負会社の選定

まず最初のステップは、「誰に設計を依頼するか?」の選定です。
設計会社、フリーランス設計者、業界特化型のマッチングサービスなど、依頼先の選択肢はさまざまです。
過去の実績や得意分野、対応の柔軟性などを総合的に見て、自社に合ったパートナーを見つけましょう。

こちらの記事に、機械設計を外注する方法についてまとめました。
あわせて参考にしてみてください。

🔍選定時のポイント:

  • 同じ業界・製品ジャンルの設計経験があるか?
  • 見積や納期回答のレスポンスが早いか?
  • 担当者と円滑にコミュニケーションできるか?

仕様の説明

依頼先が決まったら、次は「何を設計してほしいか」を伝えるフェーズです。
ここで伝える情報の質が、その後の設計品質や見積精度に直結します。

📄主な説明内容:

  • 製品の概要(使用目的・想定環境・サイズなど)
  • 要求仕様(動き・荷重・精度・材質 など)
  • 参考資料(過去の類似機種の図面や設計書、部品表など)

見積もり

仕様をもとに、請負側から作業工数・金額・納期などの見積もりが提示されます。
この段階で、依頼内容の齟齬や追加費用のリスクをできるだけ潰しておくことが大切です。

📌見積確認のポイント:

  • 成果物の範囲は明確か?
  • 納期は妥当か?
  • 途中で仕様変更した場合の対応(追加費用など)は記載されているか?

注文書発行

見積もりに合意できたら、正式に発注するための注文書を発行します。

設計

ここからいよいよ実設計に入ります。
進捗の途中で中間レビューや図面の確認を挟むことで、完成後の手戻りを減らせます。

💡注意点:

  • 複数ステップ(構想図→組立図→部品図)の段階で確認をしたい
  • チャットやWeb会議など、リアルタイムで連絡できる手段があると安心

納品

設計が完了すると、納品データ(PDF、DXF、3Dモデルなど)が提出されます。
納品物の形式は、あらかじめ取り決めておくと無用なトラブルを防げます。

検収・支払い

納品内容を確認し、仕様通りに仕上がっていれば検収を行います。
問題がなければ、取り決めた支払い条件に従って報酬を支払います。

🧾支払い方法の例:請求書ベースでの月末締め・翌月払い

機械設計の請負との違い

外部に設計業務を依頼する方法として、「請負」とよく比較されるのが「業務委託」です。
一見すると似たような言葉に思えますが、実は契約の性質が大きく異なります。
目的や状況に応じて、どちらの契約形態が自社に合っているかを見極めましょう。

請負は「成果物に対する契約」

請負契約では、「○○装置の図面を納品する」といった成果物が契約の対象となります。
請負先は、どうやって設計を進めるかを自由に決められる一方で、最終的に指定された品質・納期で成果物を納める責任を負います。

  • 成果物が完成してはじめて報酬が支払われる
  • 指示は必要最小限、成果で評価される
  • 途中の進め方は設計者に一任

✅ 設計内容が明確で、「ここまでをこの納期でお願いしたい」とゴールが定まっている案件に向いています。

業務委託は「作業の遂行に対する契約」

一方、業務委託(正確には準委任契約)は、一定の作業を進めること自体に対する契約です。
時間単位や月単位での報酬となり、成果物の有無にかかわらず、労働時間に応じて報酬が発生します。

  • 業務の進行が目的で、成果物は必須ではない
  • 業務指示を柔軟に行える(作業範囲が変動しても対応しやすい)
  • 設計の途中段階や議論、検討といった流動的な業務に対応可能

✅ 「一緒に考えながら設計を進めたい」「要件がまだ固まっていない」といった状況での活用に向いています。

請負と業務委託の比較表

比較項目請負契約業務委託契約(準委任)
契約の対象成果物
(図面や3Dモデルなど)
業務の遂行
(設計支援、検討など)
報酬の発生成果物の納品後作業時間や作業期間に応じて発生
指揮命令系統発注者は原則、業務の指示を出せない発注者が業務内容を指示できる
向いている場面要件が明確な業務、部分的な設計・製図依頼上流設計、案件定義、試行錯誤が必要な業務

このように、「完成された成果を求めるのか」「一緒に検討を進めるのか」によって、適した契約形態が変わります。
設計業務の性質や、社内でどこまで決まっているかによって、最適な選択をしていきましょう。

まとめ:機械設計の請負は自社の設計者不足を補う手段です

製品開発を進めたいけれど、設計リソースが足りない――。
そんなときに頼れるのが、外部の機械設計者による「請負」という選択肢です。

請負であれば、依頼内容と成果物を明確に定めたうえで、社外の専門家に一括して設計を任せることができます。
構想設計から図面作成、既存図面の改造や3Dモデリングまで、必要な部分だけを依頼できるため、社内の人手不足やノウハウ不足を補う手段として非常に有効です。

  • どうやって依頼先を選べばいいのか?
  • 仕様の伝え方がわからない…
  • 納品物のチェックって何をすれば?

といった不安もあるかもしれませんが、請負の流れを押さえておけば大きく外れることはないでしょう。
※当ブログでも、これらについても今後解説していきたいと思います。

「図面化してもらいたい内容がある」「製品の構想を形にしてほしい」といった想いがあれば、まずは相談から始めてみましょう。

私自身も、現役の機械設計者として業務委託のご依頼を承っています。
製缶物やモータを使った装置、精密装置の設計など、自社に設計者を持たない中小企業様を中心に製品開発をお手伝いしてきました。
この経験を活かし、御社の設計パートナーとして柔軟に対応いたします。

  • 社内に設計者がいないが、試作や新製品開発を進めたい
  • 技術的なアイデアを一緒に形にしてくれる人が欲しい
  • まずは小さな案件から試してみたい

このようなご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
設計リソースを“外に持つ”ことで、貴社の開発スピードはきっと加速します。

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