
求人サイトで設計者を募集しているが、なかなか応募が集まらない…
こんなお悩みはありませんか?
少子高齢化と都市部への人材集中、そしてIT志向の高まりで、機械設計は若手のなり手が減少しています。
求人を出しても応募が少なく、採用しても定着しない…という悩みを持つ企業もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、特に製造業の中小企業の社長・採用担当者様に向けて、機械設計者を採用するポイント3選について解説します。
待遇面や福利厚生面では大手には敵わないかもしれませんが、中小企業の採用は大手ができないやり方で人材を惹きつけることができます。
ぜひ、自社の設計リソースを確保し、ものづくり・新規事業を推進できるようになれば嬉しいです。
製造業の人材は不足している
中小企業庁の調査によると、人材が不足していると答えた企業は全体の約6割に達し、とくに従業員数30名以上の企業では7割を超える結果が出ています1。
転職市場においても、2025年7月の全体求人倍率が2.42であるのに対し、エンジニア(機械・電気)の求人倍率は5.37で、全体平均を大きく上回っています2。
このように、2025年現在は仕事を探している人よりも求人の数の方が多い「売り手市場」です。
つまり、求人を出したからといって自然に人が集まる時代ではありません。
応募者は複数の企業を比較し、「自分にとって魅力があるか」を基準に選んでいます。だからこそ、中小企業が機械設計者を採用するには、従来の「条件提示型」の募集から一歩踏み出し、自社ならではの強みや働きやすさを前面に出す必要があるのです。
では、中小企業が一歩踏み出すためのポイントは何でしょうか?
結論、
- 企業のビジョンで機械設計者を惹きつける
- リモートワークで機械設計者が働ける環境を整える
- 副業で機械設計者を採用する
の3つであると筆者は考えています。
企業のビジョンで機械設計者を惹きつける

中小企業が大企業と競い合うには、「この会社で働きたい」と思わせるビジョンを明確に示すことが欠かせません。
例えば、
- 地域のものづくりを支える
- (大企業は入ってこないような)新しい市場に挑戦する
といった明確なビジョンが示されていれば、応募者は自分の仕事が社会に貢献し、今までにない新しい挑戦をイメージしやすく、企業への興味も増します。
大企業にはない「意思決定の速さ」「多能工として幅広い経験を積める環境」「地域密着のやりがい」など、中小企業ならではの魅力を言語化することが、採用競争を勝ち抜く最初の一歩です。
さらに、「会社の雰囲気の良さ」や「社長の人柄」に魅力を感じて、入社を決めるというパターンもあるでしょう。
地元で就職を考えている設計者に対しては、このような訴求の仕方が効果的です。
リモートワークで機械設計者が働ける環境を整える

若い世代を中心に、柔軟な働き方を重視する傾向は年々強まっています。大企業の多くが出社回帰を進める一方で、中小企業やスタートアップはリモートワークを積極的に取り入れることで、人材獲得において優位に立つチャンスとなります。
リモートワークの導入は、採用にも効果があります。
東洋ハイテック(業種:建設業)は、2020年よりリモートワーク制度を全社で導入しました。リモートワークの過去1年間の利用者数は129人(2023年7月時点)で、約8割の従業員がリモートワークを活用しています3。
技術職の場合、設計業務はCADを使って自宅で行い、機械の組み上げなど現場での作業が必要な場合は顧客工場に出張して対応しています。
リモートワーク導入によって、同社の新卒採用エントリー数は456%増加しました。
(2019年度:27人、2022年:150人)
機械設計業務のすべてをリモートで完結させるのは難しいものの、実は多くの工程はオンラインで十分に対応可能です。
図面をドラフターで手書きしていた時代は、設計室への出社が必要でした。
現在は、ネットワーク上でライセンス認証が可能なCADに加えて、Web会議やクラウド図面管理システムがあります。これらのツールを使えば、設計業務を自宅で行うことが可能です。
一方で、試作の組み立て、生産ラインの立ち上げや実機確認といった工程は出社が必要です。ハイブリッド勤務(出社とリモートの組み合わせ)を導入するのが現実的でしょう。
機械設計者が在宅勤務でできる仕事・できない仕事については、こちらの記事で詳しく解説しました。
働き方に柔軟性を持たせることが、大企業と肩を並べて優秀な機械設計者を惹きつける武器になります。
ただし、リモートワークがしたいだけ、自分の権利だけ主張する、こういった応募者は採用段階で見分けなければいけません。
副業で機械設計者を採用する

採用難が続く中小企業にとって、有効な戦略のひとつが「副業として機械設計者を受け入れる」方法です。
近年は働き方改革によって大企業社員の残業時間が減少傾向にあります。その結果、副業に取り組める人材が着実に増えています。大企業で活躍する設計者に、空いた時間を活用してもらうことで、自社の設計リソースを確保できます。
副業で設計者を採用することは、企業側・設計者双方にメリットがあります。
企業側は業務委託として依頼することで、雇用リスクを抑えられます。設計者側も本業を維持しながら新しい挑戦ができます。
まずは小さな案件からスタートし、信頼関係が築ければ業務範囲を拡大する、という形で進めることもできます。
世界中でビジネスを成功させている華僑の経営者も、「優秀な人材を休日に手伝ってもらい、成果に応じて報酬を渡す」という手段をとっています4。まさに中小企業が副業人材を活用する姿と重なり、実践的な採用戦略といえるでしょう。
近年、副業解禁の流れはあるものの、実態として副業エンジニアを採用している製造業は少ないです。特に、大企業は費用の支払いがシステム化されており、業務の外注化も実績のある派遣会社以外は使わないという事例も見受けられます。
なので、「副業設計者を採用する」という柔軟なアプローチができるのは、中小企業ならではの強みとなります。まずは図面の作成や小さな設備の設計、流用設計など、副業設計者の活用を小さく始めてみてはいかがでしょうか。
求人サイト以外で機械設計者を探す方法について、こちらの記事でまとめました。
「副業の設計者を探す方法が分からない…」という方は、参考にしてみてください。
(まとめ)大企業が取れない手段で設計者を採用してみましょう!
機械設計者の採用は「売り手市場」の状況が続いており、従来のやり方では人材を確保することが難しくなっています。だからこそ、中小企業には大企業とは違うアプローチが求められます。
この記事でお伝えしたポイントは次の3つです。
- 企業のビジョンで機械設計者を惹きつける:会社のビジョンや経営者の思いを明確に伝え、共感を軸に人を惹きつける
- リモートワークで機械設計者が働ける環境を整える:リモートワーク制度を導入し、柔軟な働き方を訴求して候補者の母集団を広げる
- 副業で機械設計者を採用する:副業解禁の流れを受けた、大企業の人材を副業の受け皿としつつ、自社の設計リソースとして活用する
これらは大企業には真似しづらい「中小企業ならではの採用戦略」です。求人票や自社サイトでビジョンを発信し、リモートワークで働ける環境を整え、副業で関われる案件を準備するだけでも、採用の成果は変わってきます。
「人材不足だから仕方ない」と諦める必要はありません。今日から一歩を踏み出し、貴社のものづくりを前に進めていきましょう。
- 中小企業庁「2025年版 中小企業白書(HTML版) 第4節 人材戦略」 ↩︎
- doda「転職求人倍率レポート(2025年7月)【最新版】」 ↩︎
- 厚生労働省「令和5年度テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰」 ↩︎
- FRIDAYデジタル「「日本で金持ちになるのは世界で一番簡単だ」日本・世界を掌握する中国人パワー…『シン・華僑』の実態」 ↩︎