機械設計の業務委託とは?できること・流れ・事例を現役設計者が解説!

機械設計の業務委託とは? コラム

👨‍💼「社内に設計者がいない」
👨‍🔧「試作や新製品の開発を進めたいけれど、人手が足りない」

そんな悩みを抱える製造業の企業も多いのではないでしょうか。近年は、副業やフリーランスとして働く機械設計者も増え、業務委託で機械設計を依頼するという選択肢が広がっています。

しかし、「業務委託と請負の違いがわからない」「業務委託ではどんな依頼ができるの?」と疑問に思う方も多いはずです。

本記事では、現役の機械設計者であり、実際に業務委託として設計を行う筆者キウイが、機械設計の業務委託について、依頼できる内容・契約の流れ・実際の事例までわかりやすく解説します。

業務委託を活用することで、自社に設計者を採用せずとも、開発スピードを落とさずにものづくりを前進させることができます。ぜひ最後までお読みいただき、貴社に合った設計リソースの確保の仕方を見つけてください。

機械設計の業務委託とは

機械設計の業務委託とは、外部の設計者や設計会社に、特定の設計業務を依頼する契約形態のことです。
自社の正社員として雇用するのではなく、業務単位で外部パートナーに依頼する点が特徴です。

業務委託(準委任契約)と請負の違い

まず、「業務委託(準委任契約)」とは、成果物の完成を約束せず、業務を遂行すること自体に対して報酬が支払われる契約です。
設計者は依頼内容に沿って設計業務を進めますが、成果物の完成責任までは負いません。
そのため、仕様変更や検討フェーズを伴うプロジェクト、開発初期の試行錯誤段階に向いています。

一方、「請負契約」は成果物を完成させる責任を負う契約です。
依頼者が求める図面や設計データを納品してはじめて報酬が発生します。
完成した成果物の品質や納期に責任を持つ必要があるため、契約内容や仕様を明確に決めてから進めるのが一般的です。
たとえば、「組立図と部品図を納入」「試作機を完成品として納入」といったケースが該当します。

機械設計の請負については、こちらの記事でも解説しました。

機械設計の業務委託でできること

機械設計の業務委託では、以下のような業務を依頼できます。

構想設計

お客様の「こういう装置を作りたい」「この動きを実現したい」といった要望をもとに、構造や方式を考える工程です。
アイデア段階のラフスケッチをしたり、構想をCADで作成したりして、アイデアが形になりそうか、現実的かを検討していきます。

機構設計・レイアウト設計

モーター、シリンダー、カム機構などを組み合わせて、意図した動きが実現できるように構成する工程です。
使用環境やメンテナンス性を考慮しながら、部品配置や筐体サイズを検討します。

詳細設計

構想やレイアウトが固まった後は、個々の部品を製作できるレベルまでに機械の形状(3Dモデルや組図)を落とし込んでいきます。ベアリングなどの寿命計算をするのもこの詳細設計のパートです。

製図(バラシ)

詳細設計で作成された組図や3Dモデルから、図面を作成する工程です。特に2D CADを用いた設計では組図から部品図に図面を展開していく行為で、通称「バラシ」と呼ばれています。

3D CADを用いた設計では、3Dモデルから各部品・アセンブリの図面(部品図・組図)を作成します。

3Dモデリング

3D CADソフトを用いて3Dモデルを作成する工程です。構想設計やレイアウト設計である程度形になった部品を、詳細設計レベルで3Dモデル化します。

3D CADを導入する前の機械は2次元図面で設計されています。2Dデータを3Dデータに変換すると、現行の3D CADで過去の機械の設計データを見られるようになります。このような目的で3Dモデリングをすることもあります。

3Dモデルにすることで、干渉チェックやアニメーションによる動作検証など、2Dでは検討が難しかったことも可能になります。特に、複雑な機械は3D CAD化の恩恵が大きいです。

既存図面からの流用設計

すでにある図面をもとに、寸法変更や一部仕様変更を行う「流用設計」も、業務委託で依頼できます。

流用設計は設計変更の内容が明確であれば、比較的依頼しやすい分野です。図面も過去の図面を流用することが多く、ゼロから3Dモデル・図面をつくる必要がない分、納期も短くできる傾向にあります。


このように、業務委託による機械設計は「構想から図面完成までの一貫対応」だけでなく、「部分的な図面作成・3Dモデリング」や「既存図面ベースの流用設計」など、さまざまなフェーズで依頼ができます。

「社内で手が回らないところを頼みたい」というご要望にも柔軟に対応できるのが、機械設計を業務委託することのメリットといえるでしょう。

機械設計の業務委託の流れ

機械設計の業務委託の流れは、おおむね次の通りです。

機械設計の業務委託の流れ

業務委託先の選定

まず最初のステップは、「誰に設計を依頼するか?」の選定です。

  • 設計会社に依頼する
  • クラウドソーシングサイトで募集する
  • 個人の設計者に依頼する

という選択肢があります。

過去の実績や得意分野、対応の柔軟性などを総合的に見て、自社に合ったパートナーを見つけましょう。なお、派遣会社に依頼する場合は、派遣会社との派遣契約になるため、本記事では割愛します。

こちらの記事にも、機械設計を外注する方法についてまとめました。

業務委託内容のすり合わせ

依頼先が決まったら、次は「何を設計して欲しいか」を伝えるフェーズです。
ここでは、依頼側(企業)と受注側(設計者)がお互い納得のいくようにすり合わせをすることがポイントです。

機械設計においては、企業側は次のようなことを伝えると良いです。

  • 業務の背景、目的
  • どんな機械を作りたいのか(開示できる範囲の機械の仕様)
  • 業務委託することで、自社がどういう状態になってほしいか(例:〇月までに、△△装置の試作1号機が設計完了している状態)
  • 設計者に求めること(スキル面、人材面)
  • 業務委託の期間(厳密に〇月と決める必要はなく、△△装置のプロジェクトが完了するまで、というレベルのもので良い)
  • 稼働時間(例:目安として月20~40時間は稼働してほしい)

一方、設計者は次のようなことを考慮しながら案件を受注するかどうかを判断しています。上記に加えて、次のようなことも確認できると良いでしょう。

  • 依頼内容が自身のスキルセットにマッチするか
  • 現在のスキルセットが多少足りないところがあっても、キャッチアップしながら進めそうか
  • 月の稼働時間は確保できそうか
  • 報酬は納得ができる水準か

業務委託契約

業務委託先と業務のおおまかなすり合わせができれば、業務委託契約を締結します。

契約は口頭でも成立しますが、後から「言った・言わない」のトラブルを避けるためにも、書面での契約書作成を強くおすすめします。

初めて業務委託契約書を作成する場合は、弁護士の先生にお願いして作ってもらうことをおすすめします。専門家の目から抜け・漏れのない契約書を作っていただけます。

自身の業務委託の経験も踏まえると、契約書には、以下のような内容を明記しておくと良いでしょう。

  • 業務の内容・範囲
  • 成果物の有無(準委任契約か請負契約か)
  • 契約期間(開始日・終了日)
  • 報酬金額と支払い条件、出張時の旅費の扱いについて
  • 秘密保持・著作権の扱い
  • 契約解除の条件

設計業務の遂行

契約締結後は、設計者が実際に設計業務を進めるフェーズです。
この段階では、定期的な打ち合わせやレビューを行い、進捗を共有しながらプロジェクトを進めます。

検収・支払い

業務委託契約は月末締めで検収をするのが一般的です。設計者が請求書を月末に提出しますので、内容を検収し、契約した期日までに支払いを行います。

支払いのタイミングは企業によって異なりますが、翌月末や翌月特定日(10日など)とするパターンが多い印象です。

無事機械が動作して納品完了、またはプロジェクトが一通り終了、契約書で交わした契約期間が終了、など区切りがつけばいったん契約は終了となります。その後は、別件でお願いしたいことがあれば引き続き業務を依頼してもよいですし、依頼を終了しても構いません。

機械設計の業務委託事例①:フリーランス

会社から独立し、フリーランスで働いている機械設計者は、クライアントと業務委託契約を結んで働いています。

自宅または事務所を借りて仕事場所としており、前職のつながりから仕事を取っている方が多い印象です。また、ロボカルなどのマッチングサイトを活用して案件を受注するケースもあります。

機械設計の業務委託事例②:副業

本業の会社で働きながらも副業として設計を行っている機械設計者も、同様にクライアントと業務委託契約を結んで働きます。

依頼のきっかけは様々ですが、自身や知り合いの副業設計者だと

  • 人づてで仕事を紹介される
  • クラウドソーシングサイト(クラウドワークスなど)
  • 副業サイトやSNS(X)を通じて受注する

といったケースが多いようです。

近年、副業解禁の流れから副業の働き手は増えています。
副業人材は「常駐までは必要ないが、設計経験者に試作の構想を見てもらいたい」といった要望も柔軟に対応可能で、月20時間からといった小規模な検討からスタートできることが魅力です。

副業の機械設計者を活用するメリットは、次の記事でまとめました。

機械設計は、リモートで働く業務委託の形もある

近年では、リモート環境で機械設計業務を行うケースも増えています。

以前は「設計者は現場に常駐して作業するもの」というイメージが強くありましたが、

  • ネットワークライセンスのCAD
  • オンライン会議ツール
  • 図面やデータのクラウド管理

などが普及したことにより、リモートワークでも業務を遂行できる環境が整ってきました。

筆者も実際にリモートワークをベースに機械設計の業務委託を行っています。自宅のPCにCADをインストールし、構想図をもとにクライアントとWeb会議ですり合わせ、詳細設計で図面作成まで行っています。

自社の地域に設計者が見つからない、応募しても人が来ないという場合はリモートワークで仕事を依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。

「機械設計はリモートワークできる?」というテーマで以下の記事を書きました。現場に行かないとできない仕事はもちろんありますが、思っている以上にできることが多いな、という印象です。

まとめ:機械設計の業務委託は、設計リソースを強化する有効な手段

今回は、機械設計の業務委託について解説しました。
社内に設計者を雇用せずとも、必要な期間・範囲で外部の設計パートナーに依頼できる柔軟な手段です。

構想設計や詳細設計、3Dモデリングといった設計フェーズの一部を外注したり、
副業・フリーランスの設計者にリモートで依頼したりと、
自社の状況に合わせた最適な体制を組むことができます。

人手不足が深刻化する中小企業にとって、
業務委託は自社にない経験・スキルを取り入れながら開発スピードを加速できる現実的な選択肢です。
新規事業の立ち上げや試作など、リスクを抑えて一歩を踏み出したい企業にも向いています。


筆者自身も、上場企業に設計・開発者として勤めながら、機械設計の業務委託を承っています。
モータを使った動力装置や製缶物、精密装置の設計など、自社に設計者を持たない中小企業を中心に設計者としてものづくりプロジェクトを伴走しています。
製造業での約15年の経験を活かし、御社の設計パートナーとして柔軟に対応いたします。

  • 社内に設計者がいないが、試作や新製品開発を進めたい
  • 技術的なアイデアを一緒に形にしてくれる人が欲しい
  • まずは小さな案件から試してみたい

このようなご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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