機械設計の人手不足の理由と対策2選

機械設計が人手不足の理由と対策 コラム

50代、60代の社員がもうすぐ退職し、人手不足になりそう

若い設計者が入社してこない・・・

このような悩みを抱える企業の社長さんや採用担当者の方は多いのではないでしょうか。

今回は、機械設計が人手不足である理由と、人手不足への対策2選を解説します。

✅機械設計が人手不足なのは、社会の構造的な問題。
✅人手不足対策として、「副業人材」「設計外注」を活用しよう!

上記が、この記事の結論になります。

自社内の設計リソースに限界を感じている、設計者の新卒採用に苦戦している、という方にぜひお読みいただきたいです。

機械設計が人手不足の理由①:近年は比較的景気が良い

リーマンショック時やバブル崩壊後の就職氷河期時代と比べると、ここ十年は比較的景気が良いです。

完全失業率は、リーマンショック後の2009年7月に過去最高の5.5%を記録した後、低下傾向にあり、2025年8月は2.6%となっています1。2020年はコロナショックで一時期3%を超えた時期もありましたが、すぐに低下しました。

(画像引用:総務省「労働力調査(8月)」)

また、企業の設備投資額も24年度で過去最高を更新しています2

設備投資が多いということは、それだけ新しい機械が作られる案件が多く、機械設計者の仕事もあるという状況です。

実際に企業は設計者を求めています。dodaによると、エンジニア(機械・電機)の求人倍率は5.38と、全体の求人倍率2.43を大きく上回っています3

このように、近年の景気動向から数値で「機械設計の仕事が多くある=機械設計の人手不足」ということが見えてきます。

機械設計が人手不足の理由②:若者の人気が減っている

残念ながら、将来の機械設計者のなり手である大学生は、製造業の就職を希望する人が減っています。

2023年度の大学学部卒業者における就職者数の増減を2018年と比較すると、製造業は約5,000人就職者数が減っています。一方で情報通信業への就職者数は約11,000人と増加しています4

概して、製造業が不人気で、IT業界が人気という状況です。

実際、インターンシップで会社に来る学生さんの話を聞いても、

学生さん
学生さん

情報学科は人気で倍率も高い。機械学科はものづくりに興味のある学生が来るものの、倍率はそこまで高くもない

とのことでした。

IT産業は成長産業であり、この業界はリモートワークや独立がしやすいなど、働き方に自由度があるのも若者を引き付けるのでしょう。

機械設計が人手不足の理由③:50代~60代の設計者が引退する

日本のメーカーにおいて設計者のボリュームゾーンは50代、60代が多いです。この世代はバブル期の大量採用によって、社員数が多くなっています。

一方で40代の技術者は少なく感じます。筆者が勤める産業機器メーカーでも体感的にそう思いますし、日経クロステックの記事においてもHIOKI(日置電機)や住友電設も同様に「40歳代の従業者が特に少ない」とのことです5。40代は就職氷河期の世代で、企業が採用数を抑えた結果と考えられます。

これから定年を迎え引退する技術者も多くなり、働き盛りともいえる40代が少ない、というのが現状なのです。50代、60代の技術者が引退すると機械設計の働き手が減り、人手不足がより加速すると考えられます。

機械設計が人手不足の理由④:未経験からの参入ハードルがある

独学でスキルを習得しやすいIT業界やプログラマーと違って、機械設計職は独学でのスキル習得は難しく、まずは企業で数年間働いてスキルを得ていきます。

そのため、未経験からの参入ハードルはそれなりにあり、「未経験から機械設計に参入する」というキャリアルートが乏しいです。

そして機械設計の一番のなり手である若者は、前述したように製造業への関心を持つ人が少なく、新規参入者も先細っていく、という状況です。

職業訓練校やUdemyなどでCADのスキルは比較的習得しやすいですが、機械設計の仕事はCAD操作だけではありません。

  • 材料の選択や加工方法の決定
  • 加工できる形状の設計やものづくりに耐えるコストダウン設計
  • 仕様を満たすための強度、剛性計算
  • モータやセンサーなど、周辺機器の利用技術

こういった総合的な知識・技術が必要になります。

そしてこのような知識・技術は独学では身に付きづらく、企業に数年間働くことで得られていくものです。

また、高校の物理履修経験だったり、大学の力学やものづくり実習だったりといった学生時代からの経験も何気に活きてきます。

今は機械設計の教材も多いですし、未経験からでも受け入れてくれる企業もありますので、そこから設計者を目指すことも可能です。しかし、そういったキャリアを積んで機械設計者になるにしてもある程度の時間はかかることは間違いありません。未経験からでも3年くらいは見たほうがいいかな、という感覚があります。

このように機械設計は総じて「仕事はあるが、なり手が少ない」という状況であるため、人手不足になっていると言えます。

では、この人手不足の状況を打開するにはどのような方法があるでしょうか?

対策①:副業人材を活用する

中小企業庁によれば、「副業がある者の数」つまり副業を実践している人数は、2012年の213.2万人から2022年で304.0万人と、10年間で約100万人増加しています6

このデータは業種問わず全体的なものですが、副業解禁の流れに乗って技術者の副業人材も増加し、企業側にもマッチングのチャンスが増えるでしょう。

副業人材は企業にとって自社にないノウハウや視点を持っており、うまくマッチングすれば自社の新規事業を大きく推進させることができるでしょう。

また、本業もしながら副業もするというのは大変なパワーが求められます。その分、イヤイヤやらされているのではなく、自分で選択して副業をしていますので、副業人材の自主性は高いです。その自主性の高さを、企業のビジネス推進に活用できることは企業において大きなメリットになります。

副業人材を活用するメリットは、以下の記事で解説しました。

とはいえ、企業にとっていきなり副業人材を受け入れるのには不安もあると思います。次の記事で、副業人材の活用を成功させるポイントについて解説しましたので、こちらもご参考ください。

対策②:設計会社などに外注する

設計リソースを外注するのも一つの対策です。副業で業務委託契約として依頼することも外注のイチ手段ではあるのですが、ここでは派遣会社や設計会社など、企業に外注することを想定します。

設計会社はプロの設計集団で、複数の設計者を抱えています。機械設計者だけではなく電気設計者、ソフト設計者など多分野の技術者が在籍する会社さんもいます。

  • 大量の図面を起こす、大規模装置の設計を依頼したい
  • 装置一式をまとめて依頼したい

こういった依頼に強いのが設計会社の特徴です。

また、ベトナム人スタッフのオフショア設計のように、外国人人材を活用するという手もあります。多くのマンパワーを必要とする設計業務を、安く発注できるのがオフショア設計のメリットです。

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機械設計を外注する方法については、下記の記事でも詳しく解説しました。

(まとめ)機械設計の人手不足は構造的な問題

この記事では、機械設計が人手不足である理由について、以下の4つを解説しました。

  • 近年は比較的景気が良い
  • 若者の人気が減っている
  • 50代~60代の設計者が引退する
  • 未経験からの参入ハードルがある

人手不足の理由は、構造的な問題と言えます。少子高齢化も後押しし、今後もしばらくは慢性的な人材不足が続くと考えられます。

このような状況では、「人を採用する」ことに並行して、「社外の力を活用する」という視点を持ってみてはいかがでしょうか。副業人材を取り入れれば、経験豊富な設計者の知見を活かすことができ、設計会社への外注を行えば、大規模案件や繁忙期のリソース不足を柔軟に補えます。

筆者自身も、上場企業に設計・開発者として勤めながら、機械設計の業務委託を承っています。
モータを使った動力装置や製缶物、精密装置の設計など、自社に設計者を持たない中小企業を中心に製品開発をお手伝いしてきました。
製造業での約15年の経験を活かし、御社の設計パートナーとして柔軟に対応いたします。

  • 社内に設計者がいないが、試作や新製品開発を進めたい
  • 技術的なアイデアを一緒に形にしてくれる人が欲しい
  • まずは小さな案件から試してみたい

このようなご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
機械設計の人手不足に”副業人材”を活用することで、貴社の開発スピード推進に貢献いたします。


  1. 出典:総務省「労働力調査(8月)↩︎
  2. 出典:厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析↩︎
  3. 出典:doda「転職求人倍率レポート(2025年8月)【最新版】↩︎
  4. 出典:就職みらい研究所「就職先産業・職業の変化から推考する、学部生の専門職志向↩︎
  5. 出典:日系クロステック「40代技術者はどこにいる?「就業構造基本調査」で見る年齢構成のゆがみ↩︎
  6. 出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書(HTML版) 第4節 人材戦略」  ↩︎

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