副業の機械設計者に依頼できる?地方企業が知っておきたい活用の実態

副業の機械設計者に依頼できる? コラム

地方の製造業を営む経営者や採用担当者の方で、「新規事業でものづくりをしたいが、肝心の機械設計者が社内にいない」といったお悩みを抱えていませんか?

専門スキルを持つ人材は都市部や大企業に集中しがちで、地方の中小企業にとって機械設計者を正社員として採用するハードルは高まっています。

しかし、その課題は「正社員採用のみ」にこだわっていてはいつまでも解決しないかもしれません。

もし、スキルと経験を合わせ持つ機械設計者に、「副業」としてプロジェクトに入ってもらえるとしたら、どうでしょうか?

本記事では、実際に副業で機械設計を行っている筆者キウイの視点から、

  • 副業設計者のリアルな働き方
  • 企業が副業設計者を活用することについて

を詳しく解説します。

「周りに適切な人材がいない」と諦める前に、副業の機械設計者の採用もぜひご検討ください。この記事が、貴社の「ものづくり」を加速させる、新しい戦力を見つけるヒントになれば幸いです。

地方企業は専門人材の採用が難しい

地方企業は人材確保が課題で、特に専門人材の採用は難しいです。地方においてはそもそも母集団が少ないですし、専門的な人材となると、大企業や東京に流れていく傾向があります。

少し古い調査(2018年)になりますが、経済産業省が企業を対象に実施したアンケート調査では人材が不足する分野は機械工学が最多となりました1。ソフトウェア技術者やIT業界の人気で、機械設計の成り手は減少傾向ですし、今後も機械設計者の不足は続くと筆者は考えています。

実際、私のクライアント先の企業に「貴社の周りで設計者はいなかったんですか?」と聞くと「いなかったからネットで設計者を探した」とのことでした。

機械設計の人手不足の理由と対策は、こちらの記事でも解説しました。

副業の機械設計者とは?正社員採用との違い

副業の機械設計者は、他の企業で本業として働きながら、空いた時間(主に平日夜や休日)を使って別の企業の業務を請け負うプロフェッショナル人材です。

彼ら・彼女らの多くは本業で豊富な実務経験を積んでおり、その専門性を活かして副業を行っています。

正社員採用と副業の機械設計者の活用においては、主に「契約形態」「柔軟性」「スキルの活用」において大きな違いがあります。以下に、その違いをまとめました。

正社員副業の機械設計者
契約形態雇用契約業務委託契約
業務の範囲社内の幅広い業務契約で定めた特定の業務
コスト固定費(給与、社会保険料、福利厚生費など)変動費(案件の対価としての報酬)
柔軟性低い(長期雇用前提)高い(案件単位で依頼可能)
採用ハードル高い(採用コストがかかる、専門人材を見つけにくい)相対的に低い(全国から探せる。副業希望者は増えているのも追い風)

現役の副業設計者の働き方事例

筆者は、メーカーに勤める傍ら、副業で機械設計者としても働いています。筆者の副業の働き方事例を紹介します。

稼働時間

平日夜と休日中心に副業をしています。一日の稼働時間は日にもよりますが、平日は2~3時間、休日は6~7時間くらい確保します。体感的に、次の日に支障が出ない程度の稼働時間がこれくらいですね。

最大の稼働時間は、週30時間くらい確保できる算段となります。(ざっくり平日3時間×5、休日7時間×2)

ただ、週30時間は最大限の確保時間という感じです。家族で出かけたり本業が遅かったりする日もありますし、疲れがたまった時はあえて何もせず早く寝る日もあります。

作業場所

ほとんど自宅でしています。
喫茶店やコワーキングスペースで作業もしましたが、大画面のデュアルディスプレイで作業できる自宅が一番快適ではかどります。

帰省時はノートPCを実家に持って帰って作業しています。データはGoogle DriveやOneDriveで同期しているので、ネットさえあれば仕事ができる環境です。

使用ツール

機械設計CADはJw_cadを使っています。Jw_cadは建築関係のユーザーが多いですが、汎用2D CADなので機械設計でも使えます。無料で使えますし、ショートカットを活用すれば作図も意外と効率的にできるなぁ、という印象です。PDFやDXF出力もできますので、客先や加工メーカーとのデータ共有も問題ありません。

クライアント先のライセンスを貸与していただき、そのCADツールを使って設計することも可能です。

最近は、ZW 3Dという3D CADが気になっています。ZW 3Dの価格は永久ライセンスで313,000円~と、3D CADとしては安価です。これなら個人でもなんとか手が届くかな?という感じですね。

業務内容

主に新規開発の案件を担当しています。自社で作ったことがないものを作りたいが、設計者が自社にいない(少ない)、というクライアントに向けて機械設計を担当しています。

機構のアイデア出しや構想設計~詳細設計、図面作成といった設計の一連の工程や、meviyや3Dプリンタでの発注など、部分的に製作業務も担当します。

クライアントとの打ち合わせは基本的にWeb会議ですが、顔合わせや現物確認など、出張で現地でのミーティング対応もします。

契約形態

クライアント企業とは業務委託契約を結んでいます。機密保持契約も結んでおり、業務で得た情報は外部に出さないようにしています(これは当然なのですが…)。

企業が副業の機械設計者を活用するメリット

副業設計者の活用には、企業にとって次のような利点があります。

  • ①自社にないスキルを持つ人材を活用できる
  • ②雇用リスクが低い
  • ③公的機関の支援制度を活用できる可能性がある
  • ④主体的に動く人材が多い

詳細は、下記の記事で詳しく解説しています。

副業の機械設計者に依頼する際のポイント

筆者の経験上、業務内容を切り出して「具体的にこの業務をお願いしたい」というコミュニケーションをしっかり行うことが最も重要かなと思います。

依頼時に依頼内容の大枠や副業人材に期待することを伝え、業務が進むにつれて発生する細かいところは日々のミーティングなどを通して役割分担を決めていきます。そうするとお互いに「ここまでやればいいと思っていたが、話が違う」という状況は起きにくいです。

日経新聞の記事で、副業で苦労した点のヒアリング結果が載っており、上位3つは次の通りです2

  • 副業先で協働するチームメンバーとのコミュニケーションが難しかった
  • 仕事の内容説明や要件定義が曖昧だった
  • 仕事に見合った報酬が得られなかった

逆に言えば、これらの課題を無くしていけば副業人材とのコミュニケーションはうまくいくと言っていいでしょう。下記の記事でも、副業受け入れ企業がつまづきやすいポイント・副業人材の活用を成功させるポイントを解説しました。

まとめ:副業の機械設計者は地方製造業の新しい戦力

本記事では、地方の中小企業が抱える「専門人材(機械設計者)の採用難」という課題に対し、副業の機械設計者を活用するという新しい選択肢について、現役副業設計者である筆者の実例を交えながら解説してきました。

【地方企業の想定される課題】

  • 専門人材(特に機械設計者)の母集団が少なく、採用が困難
  • ベテラン設計者の高齢化により、数年後の技術継承に不安がある

【副業の機械設計者を活用するメリット】

  • 正社員採用と比べて雇用リスクが低く、必要なタイミングで即戦力を確保できる
  • 自社にないスキルを持った人材を取り入れられる

「副業」と聞くと、「本業の片手間」というイメージを持たれる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、本記事で紹介したように、副業人材は高い専門性と主体性を持ち、企業の課題解決にコミットするプロフェッショナルです。

新しいものづくりや新規事業の立ち上げにおいて、構想設計から関われる経験豊富な設計者は不可欠です。正社員採用というハードルを越えられずに事業のスピードが落ちてしまうよりも、まずは副業の設計者とプロジェクト単位で協働してみませんか?

副業の機械設計者は、人手不足に悩む地方製造業にとって、まさに「新しい戦力」となり得る存在です。


機械設計のパートナーをお探しではありませんか?

  • 自社にない製品を開発したいが、設計者がいない
  • 新規事業のアイデアはあるが、どう形にすればいいか分からない
  • まずは、スポットで設計業務を依頼できないか

もし貴社がこのような課題をお持ちでしたら、まずは一度、本サイト「キウイ設計」の管理人キウイにご相談ください。私自身、メーカー勤務と副業設計者の両方を経験しているからこそ、企業の状況を理解しながら、一緒に伴走いたします。

貴社の事業内容や課題をヒアリングさせていただき、最適な協働の形をご提案いたします。
ご相談は無料です。お気軽にご連絡ください。

  1. 日本経済新聞「5年後に最も足りなくなる技術者は「機械工学」↩︎
  2. 日本経済新聞「副業はバラ色ではなかった 解禁5年、企業と働き手にずれ↩︎

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