ボールねじ:仕組み・構造・リードとは?現役の機械設計者が解説します

ボールねじの仕組み、ボールねじの構造、ボールねじのリードとは? コラム

ボールねじは、製造業においてよく使われる機械要素です。回転運動を直線運動に変換する最もメジャーな部品で、多くの分野で使われています。

今回は、ボールねじの仕組み・構造・リードについて解説します。
これらはボールねじを選定・利用したり、ボールねじを使った機械を設計するために必要な基礎知識です。
メーカーの若手技術者や、ボールねじをあまり使ったことがない機械設計者向けの記事です。

  • ボールねじという言葉は聞いたことはあるが、原理・仕組みはよく分からない
  • 装置の直動機構を設計することになり、メーカーカタログからボールねじの選定が必要になった
  • 既存装置の改善(ボールねじのリード変更など)を検討することになった

こんな状況になった時、知っておくと役に立つことをまとめました。

キウイです。産業機器メーカーに勤める現役の機械設計者です。ブログ「キウイ設計」を運用したり、業務委託として機械設計の副業をしたりしています。

ボールねじの仕組み

ボールねじとは、回転運動を直線運動に変換する機械要素部品です。

機械装置の動力は多くはモータが使われています。モータは回転運動なので、これを直線運動に効率よく・正確に変換することがボールねじの役割となります。
回転運動を直線運動に変換する仕組みは、直動機構と呼ばれており、ボールねじは直動機構の代表的な部品です。

ボールねじがどのように動くかは、以下の動画の0:35以降で分かりやすくアニメーション化されています。

How A Ball Screw Works (Animated)

ねじ軸が回転すると、ねじの溝が軸に沿って移動します。この移動に沿ってナットが直線状に動くのですが、その間にボールが転がることで摩擦を小さくして、ねじ軸の回転運動をナットの直線運動にスムーズに変換しています。これがボールねじが動く仕組みです。

昔ながらの床屋の看板をイメージしてみてください。看板のポールが回ると、赤色と青色の模様が下から上に動きますよね。ボールねじでいうと模様に沿ってねじが切られており、ねじ溝と一緒にナットが動くというワケです。

床屋の看板(サインポールというらしいです。)

ボールねじの動きをもう少し掘り下げて解説します。

おねじが切られたねじ軸に、めねじが切られたナットを入れて動かしてみます。この構成はすべりねじと呼ばれています。

下図のように、ナットに対してねじ軸がすべりながら回転することで、ナットは直進します。ねじ穴にねじを入れて回すとねじがどんどん締まっていきますよね。同じ原理で、ナットを自由に直進できるようにした場合はナットの方が直線運動していきます。

ねじ軸が一回転するとナットは1ピッチ分だけ直進します。
(※1条ねじの場合)

ただ、すべりねじは回転~直進間の動力伝達ロスが大きいです。これはねじ軸とナットの間がすべり摩擦になっているからです。

すべりねじの仕組み

ボールねじは、ねじ軸とナットの間にボールを設置します。動作原理はすべりねじと同じく、ねじ軸が回転するとナットは1ピッチ分だけ進みます。しかし、ボールがあることにより、ねじ軸とナットの間が転がり摩擦になります。

一般的にはすべり摩擦よりも転がり摩擦の方がはるかに摩擦が少ないです。すべりねじの効率は20~30%ですが、ボールねじの効率は95%前後と言われています1。ボールの転がりによって摩擦によるロスが減少し、効率が大きく上がります。この効率の良さが、ボールねじが直動機構に多く使われる理由です。

似たような仕組みを持つ直動機構に「遊星ローラーねじ」があります。こちらはボールの代わりにねじを使っており、接触面積を増やすことでより大きな力を伝えることができます。

ボールねじの構造

ここでは、ボールねじの主な構成部品と、ボールねじを使った直動機構の基本構成を解説します。

ボールねじの主な構成部品

下の図は、ボールねじを構成する主な部品を示しています。

ボールねじを構成する主要部品は、以下の通りです。

  • ねじ軸:ボールが通る溝がねじ状に切られているシャフト(軸)
  • ナット:ボールを介してねじ軸とかみ合う部品
  • ボール:ねじ軸とナットの間を転がる球

ボールはナットの中を循環する構造になっています。ボールの循環方式はいくつか種類があるのですが、一般的にはナットの中にボールが戻ってくる経路が設けられています。

こちらの動画で、ボールがナットの中を循環する様子が見られます。

Construction of Ball Screws(Return-plate system)/ ボールねじの構造(リターンプレート方式)

ボールとナット、ねじ軸の間にはわずかなすき間があり、これをバックラッシュ(バックラッシ)と呼びます。

ボールねじのバックラッシュについては、こちらの記事で詳しく解説しました。

ボールねじを使った直動機構の構成部品

ボールねじは回転の動きを直線動作に変える中心的な役割を果たしますが、ボールねじ単品だけでは機械はできません。直動機構を構成する最小限の構成部品を以下の図で示します。

ボールねじ以外の構成部品は以下の通りです。

  • リニアガイド:ボールねじのナットを直線案内する部品
  • サポートユニット:ボールねじのねじ軸を支持する部品。中にベアリングが入っており、ねじ軸の回転をスムーズにする
  • モータ:直動機構の駆動源。位置決めが得意なサーボモータやステッピングモータが使われることが多い
  • カップリング:モータシャフトとねじ軸を直結する部品

ボールねじとリニアガイドはセットで使われるということは覚えておきましょう。
ボールねじは軸方向以外の力(上図で言うと、上下方向の力)がかかると寿命が大幅に短くなります。ねじ軸がたわみ、ボールにかかる力が偏ってしまうからです。そのため、軸方向以外の力をリニアガイドで受けてあげるのです。

ボールねじのリードとは

ボールねじのリードとは、JIS規格によって次のように定義されています2

2π radの回転(又は1回転)に対する、実際のねじ軸とナットとの相対的な軸方向移動量。

ねじ軸が支持されている一般的な構成では、「リード=ねじ軸1回転あたりのナットの移動量」となります。

例えば、ミスミのボールねじ「BSS2010-500」は、リードが10mmなので

  • ねじ軸が1回転するとナットが10mm進む
  • 5回転するとナットが10×5=50mm進む

となります。

ボールねじの多くは1条ねじといって、ねじ溝のらせん軌道が1本(1条)で形成されています。
この場合、下図のように「リード=ねじのピッチ(山と山、または谷と谷の間)」となります。

1条ねじの場合のリードとピッチ

ただ、多条ねじと呼ばれるねじの場合は「リード=ねじの条数×ピッチ」となります。

多条ねじとはねじのらせん軌道が2本、3本と複数あるねじです。例えば3条ねじはらせん軌道が3本、120°ごとに配置されています。
3条ねじの場合は、「リード=3×ピッチ」となります。

経験上、機械設計で扱うボールねじの多くは1条ねじですが、多条ねじの場合は「リード=ねじの条数×ピッチ」であることを頭の片隅に置いておきましょう。

多条ねじのねじ溝とリードについては、下記の動画がわかりやすくておすすめです。

【機械加工旋盤 三条ネジの話】 ものづくりマイスター 機械加工 岡崎光重

ボールねじの仕組みのたとえで持ち出した床屋のサインポールですが、
・白い軸に、赤いねじ溝と青いねじ溝が切られている
ととらえれば、これは2条ねじと言えます。

この場合、「リード=2×ピッチ」となり、ポールが1回転すると、赤い模様同士(または青い模様同士)の分だけ下から上に進んでいます。

床屋のサインポールを「2条ねじ」ととらえた時のリードとピッチの関係
  1. 日本精工 (NSK)「ボールねじの摩擦↩︎
  2. JIS B1192-1「ボールねじー第1部:用語及び記号」 ↩︎

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